研究概要 |
本研究はラジカルおよびポリラジカルについて発生法から物性検討までの幅広いアプローチ、具体的には、1)高効率ラジカル発生法の開発とその有機合成への応用、2)〔3〕デンドラレン誘導体の光照射によるトリメチレンメタンジラジカルへの変換、ならびに3)ピリジニルラジカルをスピン源とする高スピン化合物の設計とその磁気的性質の三課題について検討を行った。 1)カルボン酸から容易に高収率で合成可能なN-アシルオキシフタルイミドを用いて可紫光照射下、含水溶媒中、高収率高収率で(科学収率:>70%、量子収率:1-15)で進行する脱炭酸反応を開発した。この反応は着色ラジカルアクセプター存在下でも進行し、還元的脱炭酸のみならず、脱炭酸を伴うセレノ化やテルル化反応等に応用できることを明らかにした。これらの反応は特殊な光源を必要とせず例えばタングステン灯、プロジェクターテンプ、太陽光を用いて行うことができ、そのスケールアップも容易であることを示した。特にセレノ化反応は0.5当量のジフェニルジセレニド存在下進行する優れた反応である。フェニルセレネニル基は種々の官能基に容易に変換できることから、本研究の開発によりカルボン酸の有機合成への適用範囲を大きく広げることが可能となった。 2)では従来全く光反応性が知られていなかった非環状交差共役トリエン、〔3〕デンドラレン誘導体の光反応を検討し、そのトリメチレンメタンジラジカルへの変換経路の存在を明らかにした。トリメチレンメタンジラジカルは酸素やフラシュホトリシスの実験により捕捉するすることができた。 3)では高スピン化合物として、4,4'-(m-フェニレン)ビス(1-メチル2,6-ジフェニルピリジニル)およびその類似体を設計し、電子スピン共鳴法によりそのスピン間相互作用を検討し、ピリジニルラジカルが高スピン化合物のスピン源として使用できることを示した。
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