研究概要 |
置換ベンジル置換ベンゼンスルホナ-トと種々の置換ジメチルアニリンとのアセトニトリル溶媒中でのメンシュトキン反応の速度論的機構解析を行った。3,4-ジメチル以上の強い電子供与性活性置換基をもつベンジルトシラートとの反応では、二分子反応と共存するアニリン濃度に0次の一分子反応が観測された。ジメチルアニリンの置換基変化にかかわらず一次成分は基質に対して一定の値を示す事より、S_N2反応に独立のS_N1反応の存在が証明された。広範囲の活性置換基を持つ^<13>C-^<18>O二重ラベルベンジルトシレートにおける^<18>Oスクランブリングを、^<13>C-NMRを用いて観測したところ、多重の原系復帰が見られ、S_N1反応の共存が実証された。^<18>Oスクランブリングから求められたS_N1イオン化速度は、生成物反応速度より求めたS_N1速度より10倍のオーダーで大きく、イオン対中間体に対する求核攻撃のエネルギー障壁は非常に高いことが明らかになった。S_N1反対に対する置換基効果は、ソルボリシスのS_N1機構と同程度の負に大きいrho値(-7)と大きな共鳴要求置換基定数r=1.3で特徴づけられ、S_N2反応に対する置換基効果はsigma^+に対しカーブ相関を与えた。脱離基がブロミドでは、p-メトキシ置換体に至るまでS_N2機構のみで、S_N1機構の共存は見られなかった。二級のalpha-フェネチルブロミドでは無置換体以上の基質においてS_N1機構の共存がみられ、両機構の独立性とその特徴が明らかになった。これらの結果は、多段階のS_N1と1段階のS_N2機構の二元性が妥当であると結論され、後者のS_N2機構は、遷移状態機構がルーズからタイトへ連続的にシフトする連続スペクトルで表わされ、S_N1寄り極限的S_N2もあくまでもS_N1機構の経路とは区別されると言う求核置換反応の理論的解釈を与える。
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