研究概要 |
C=C二重結合をC≡C三重結合へ変換させることは、合成有機化学において基本的に重要なプロセスの一つである。通常用いられるアセチレン結合のオーソドックスな生成法はより飽和した構造のものから安定な物質を脱離させることによっている。本研究においてC=C二重結合から直接C≡C三重結合を生成する新規で簡単な方法を見出した。一連の9,10-ビス(4'-置換スチリル)アントラセン系、4-置換4'-ニトロスチルベン系及び1-(p-置換フェニル)-1、3-ブタジエン系をジメチルオルムアミド中空気雰囲気下カリウムt-ブトキシドと処理するだけで相当するアセチレン化合物が生成することがわかった。そこで本反応の適用限界を調べた。さらに反応過程でラジカル種の介在が予測されたので、4-ジエチルアミノ-4'-ニトロスチルベンに対して本反応のESRスペクトルの測定と解析を愛媛大理の田嶋邦彦博士の協力を得て行なった。その結果、アニオンラジカル種の存在が確認でき、本酸化的脱水素反応の反応機構が解明された。多くの場合、過剰のカリウムt-ブトキシドが存在すると引き続いてベンゼン環上のニトロ基のオルト位置へ直接水酸基化が起きることもわかった。この単純な水酸基化は置換芳香族エチニル-2-ニトロフェノールの合成に有用である。これら化合物は相当する非水酸基化合物とともに非線型光学材料として期待されよう。紫外・可視および蛍光スペクトル的性質がこれらの物質について測定され、関連化合物とともに比較・議論された。以上の2種類の反応の機能性物質(機能性色素やフェノラートのような酵素活性測定用基質等)合成への応用研究に関しては現在研究中である。
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