研究概要 |
1.ジアリールメチルエステルでは、ケトン、アルコール生成は一般的であり、また、プロピオン酸をはじめとする脂肪族カルボン酸ではケトン、アルコールの生成が見られるが、安息香酸のような芳香族カルボン酸では殆ど生成しないことが明らかになった。2.ケトン、アルコール生成機構として、当初想定されたエステルのO-CO結合の開裂(α-開裂)は起っておらずC-OCO結合の開裂(β-開裂)後ジアリールメチルラジカルに酸素が反応していることが明らかになった。ジアリールメチルラジカルのアリールメチルラジカルに比べての安定性と嵩高さが、微量の溶存酸素を効率よく捕捉する要因になっていることを実験により示した。特に、α-(1-ナフチル)ベンジル、3,4-ベンゾフルオレニルラジカルが非常に効率よく酸素を捕捉することが示された。3.この反応をカルボン酸から炭素数の1つ少ないアルデヒド、ケトンを合成する方法とするための検討をおこなったが、最適条件は見いだせなかった。4.ピレンをドナー、P-シアノ安息香酸をアクセプターとしてメチレン鎖でつないだ系での光誘起電子移動とそれに伴う蛍光消光、エキサイプレックス発光について光物理化学的な検討を詳細におこなった。5.(1-ピレニル)メチル基によるアミノ基、リン酸基の保護の方法を確立し、種々のアミノ酸、ペプチド、リン酸、cAMPについて保護、光照射による脱保護をおこなった。更に生体系へ応用に適したシンナモイル基、4-クマリニルメチル基をcaged基として導入したLeu-Leu-OMe、cAMPを開発、in vitroでの光分解についての検討をおこなった。
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