研究概要 |
C_1-単位の取り込み・転移補酵素である葉酸の構造的特徴はプテリジン骨格のピラジン部位にアニリノメチル基が置換していることである。そこでまずピラジン類を含むジアジン類とアルキルラジカルとの反応を検討して、ピラジン核にアミノメチル基を導入する方法を検索した(Heterocycles、36,1127(1993))。この知見に基ずき、N-ホルミルアニリノ酢酸から過硫酸-Ag^+を用いて発生させたN-ホルミルアニリノメチルラジカルやN-ホルミル-N-(トリメチルシリル)メチルアニリンを用いる光化学反応によってピラジン核にアニリノメチル基を導入する方法を発見している。 さらに生体内でのメチル補酵素B_<12>から補酵素-Mやホモシスチンへのメチル基転移にみられるコバルトからイオウへのメチル基転移のモデル化としてメチルコバロキシムからチオール、チオエステル、ジスルフィド等へのメチル基のラジカル機構による転移反応の機構を検討した。この際、コバロキシムの下方配位子として各種ホスフィン類および4-置換ピラジン類を用いてそれらのメチル基転移能への影響を調べた。チオエステルへの転移反応では下方配位子の立体的かさ高さが影響を及ぼし、大きな配位子が大きな反応性を示した。一方、ジスルフィドへのメチル基転移では下方配位子の塩基性が重要で、その塩基性が弱いほど高い反応性を示した。 これらの結果はコバルト-イオウ間の配位相互作用が重要であることを示し、チオエステルの場合はコバルト-イオウ錯体が中間に生成しており、ジスルフィドの場合はこのコバルト-イオウ間相互作用が強く、直ちにジスルフィド結合が開裂してチオールラジカルが発生し、これがメチルコバロキシムを攻撃するとして理解できる。
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