研究概要 |
本研究はメタン菌によるメタンの生成、或は広く生物界に見られるメチオニン生合成におけるC_1単位の変換反応に於て、補酵素葉酸およびメタノプテリン上からC_1単位としてのメチル基がCo,S,Niへと転移するモデル系の再現を目的とした。 葉酸モデルの合成として、5,6-tetrahydro-5,7-dimethyl-3,6,8-trioxo-3H-pyrimido [5,4,-C][1,2,5]oxadiazinoneに2-(N-acylanilino)acetaldehydeから導かれるエナミン誘導体或はシリルエノールエーテル誘導体を作用させると、収率良く葉酸モデル化合物である7-(N-acyl)anilinomethylpteridine類が得られた。また、4,5-diamino-1,3-dimethyluracilと1,3-dihydroxyacetoneを塩基存在下結合させるとき、シスチンを共存させると位置選択性が生じ、6-hydroxymethyllumazineのみが得られた。このものは臭素化ののち(N-acyl)anilineと反応させると収率良く葉酸モデルを与えた。 N-メチル補酵素モデルとしての1,3,5,5,6,7-haxamethy1-5,6,7,8-tetrahydrolumaziniumに対してarylthiocobaloximeを作用させると^5N-メチル基の一つが硫黄に転移したarylmethylsulfideとpentamethy1-tetrahydrolumazineが生成した。この反応はコバルト錯体存在下窒素から硫黄への生体内メチル基転移を再現したものである。さらに、メタン発生菌での最終段階ではメチル-補酵素M(^-O_3SCH_2CH_2SMe)ともう一つの補酵素HS(HTP)が[Ni]-コリン錯体(F_<430>)存在下でジスルフィド(補酵素M)S-S(HTP)とメチル-[Ni]錯体を生成する。この反応を再現するために、aryl methyl sulfide存在下、tolythio-[Ni(II)]錯体を光分解してtolylthioradicalとNi(II)錯体ラジカルを発生させたところ、各種ジスルフィド類とともにtolyl methyl sulfideの生成が見られた。更に詳しく解析しなければならないが、かなり高い確率で生体反応を再現したものと考えている。
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