本研究はC_1-単位転移に関する補酵素群に関するものであり、大きく分けて3つの課題に取り組んだ。第1課題は葉酸モデル化合物の合成であり、第2の課題は補酵素B_<12>モデルとしてのコバロキシム誘導体の反応である。また第3の課題は補酵素Mのモデル反応としてイオウ上でのラジカル置換反応に関するものである。 第1課題に関してはジシアノピラジンを出発原料としてプテリジン環を合成するルートを開拓した。ここではピラジン環上のシアノ基が第一アミン類と反応して置換生成物を与えることが鍵反応となり、得られたアミノ体から、(a)イソニトリル、(b)グアニジンの作用でプテリジン環を合成する2つの新しいルートを発見した。さらにプラリジン類にアニリノメチル基を導入する方法として、(a)β-アニリノメチル酢酸の一電子参加、(b)N-シリルメチルアニリンの光反応によって生じたアニリノメチルラジカルのプテリジン環上でのラジカル置換反応を利用した2つの合成法を開拓した。さらにジアジノン類とエナミンあるいはシリルエノルエーテル間の逆電子要請型ジエン付加を利用する方法を開拓した。 第2課題に関してはメチルコバロキシムからラジカル置換反応でメチル基がイオウ化合物に転移する場合、(a)イオウ化合物上の置換基効果、コバロキシム上の置換基礎効果、(b)イオウ化合物とコバロキシム間の相互作用の分光学的研究を作った。この結果、イオウは2価のコバロキシムに強く配位し、これがイオウ上でのラジカル反応を著しく促進していることを明らかにした。 第3の課題に関してはメチル基が補酵素Mのイオウからニッケル錯体(F_<430>)へ転移する反応のシミュレーションを作った。このとき、もう1分子のメルカプタンをニッルに配位させ、これを光分解させると混合ジスルフィドが得られたことによりシミュレーション出来たと考えている。
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