研究概要 |
前年度主としてテクネチウム錯体について,分離分析に必要な基本的パラメータを求める方法の確立を求める検討を行った。この結果を基にテクネチウム及びレニウム錯体の配位子置換反応について検討した。 1.過テクネチウム酸イオンの分光光度定量 過テクネチウム酸を還元・配位子置換反応の操作を伴わずに,そのまま分光光度定量するために,トリス-(1,10-フェナントロリン)鉄(II)イオンとのイオン対抽出法による方法を基本的に確立し,さらに過テクネチウム酸イオンの分配平衡機構に関しても知見を得ることができた。 2.レニウム フリルジオキシム錯体の配位子置換反応 フリルジオキシムはレニウムと安定な錯体をつくり,その吸光度を測定することによって,レニウムの定量が可能であるが,その錯体の組成および反応性については分っていない。本研究では先ず過レニウム酸イオンをフリルジオキシム存在下でスズ(II)で還元して錯体を合成する際の最適生成条件を確立し,この方法による分光光度定量法を確立した。さらにその溶媒抽出挙動の解析によって,錯体の構造を推定した。 3.テトラキス(チオウレア)テクネチウム(III)イオンの配位子置換反応によるTc(III)-DTPA錯体生成反応機構 テクネチウム(III)錯体合成のための出発物質として開発したテトラキス(チオウレア)テクネチウム(III)イオンとDTPAとを反応させて,Tc(III)-DTPA錯体の生成反応を分光光度法を用いて速度論的に検討した。配位子置換反応速度を解析することにより,Tc(III)-DTPA錯体の生成機構を明らかにした。 我々のこれまでの研究によって集積された知見を基に,“Technetium and Rhenium-Chemistry and Its Applications"を編集し,TOPICS IN CURRENT CHEMISTRYのシリーズとして発行することになった。
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