研究概要 |
本年度は、クロリン錯体のCompound Iモデルとして、Fe(III)Chl(R=メシチル基)錯体をメタクロル過安息香酸と極低温下で反応させることで、高原子価O=Fe(IV)Chl+・(1)の合成に初めて成功した。1は-78℃では比較的安定に存在するが、温度を上げると対応するポルフィリン錯体へと変化する。この結果は、1がFe(III)Porphyrinと同じ酸化状態にある事を示すものである。O=Fe結合を分光学的に検討する目的で、-78℃での共鳴ラマン測定を行なったが、本錯体はレーザの照射条件下では不安定なため、分解反応が進行しFe=O結合の詳細を明らかとすることが出来なかった。さらに、O=Fe(IV)Chl+・とO=Fe(IV)Por+・の反応性を比較検討し、後者が圧倒的に高い反応性を示すことを明らかとした。 続いてクロリン錯体のCompound IIモデルとして、O=Fe(IV)Chlの合成に初めて成功した。すなわち、Fe(III)Chl-O-O-Fe(III)Chl錯体はラマン測定条件でO=Fe(IV)Chlを与えること明かとなった。さらに,Fe(III)Chl-O-O-Fe(III)Chl錯体をイミダゾール誘導体と反応することで、O=Fe(IV)Chl(Imidazole)中間体の低温溶液中での合成に成功した。O=Fe(IV)Chl(Imidazole)におけるFe=O結合の詳細を共鳴ラマン測定によって行なったところ、これまで酵素系で推測されていたものとは異なる結果が得られ、これまで酵素系で推測されていた中間体の構造について再検討が必要なことを示した。
|