(1)Q_A^<・^^->の生成消滅過程を325nmの波長を指標として調べたところ、半減期140μs程度と、2ms程度の緩和過程が見られた。この140μs程度の成分はQ_A^<・^^->→P680^+への電子伝達過程であることが解明された。さらにFe^<3+>(非ヘム鉄)の増加の割合と、この140μs成分の増加の割合は一次の比例関係にあった。 一方、強光照射環境下では光化学系II(PSII)は、反応中心蛋白質複合体が光阻害(Photoinhibition)を受け解体し、それが再構築される現象が知られている。その光阻害の引き金は、Q_Aの二電子還元、即ち、Q_A^<2->の生成であるらしいことが報告されている。非ヘム鉄を酸化した場合、第一安定電子受容体(Q_A)から反応中心(P680)への電子逆供与(Back Reaction)が促進される事実は、PSIIでの光化学反応中心蛋白質の光阻害防御機構(Q_A^<2->生成阻止機構)との関連性を示唆する物である。--(平成5年度) (2)PSII反応中心では、強光照射の結果として酸化側と還元側で生じる2種類の阻害が知られている。還元側の阻害は酸素存在下で起こり、酸化側の阻害は無酸素条件下でも起こると言われている。我々は、これらの阻害過程について、Q_A光還元活性の減少と機能分子の損傷との関係に着目した。また、PSIIの非ヘム鉄(Fe^<2+>)を除去した試料を調製し、非ヘム鉄のこれらの機構に及ぼす影響について研究を始めた。 酸素存在下、Mn^<2+>非存在下で、PQ_A離脱を伴わないQ_A活性の低下の存在を観測し、そのときβ-カロチンの著しい減少を伴うことを見いだした。また酸素の有無に関わらず、正常な酸素側のモデル系ではβ-カロチンの減少が強く抑えられることなどの事実を見出している。--(平成6年度) さらに研究を進め、これらの事実に基づきPSII光阻害機構と非ヘム鉄との関連性を解明したい。
|