研究概要 |
本研究では前年度の成果を踏まえ、さらに多様な構造の配位高分子錯体単結晶を得ることを目的に合成研究を進めた。これにより下記にまとめた様な銅配位高分子の単結晶化に成功し、結晶構造を得た。 (1){[Cu(pzdc)]・4H_2O}_n及び{[Cu_2(pzdc)_2(pz)]・2H_2O}_n それぞれ2,3-pyrazinedicarboxylic acid(H_2pzdc)を架橋配位子とした銅の一次元、及び三次元のポリマーであることがX線構造解析から明らかになった。これら構造に基づくバンド計算を行ない銅-ピラジン系の固体状態における電子構造を解明し、これらの磁化率の測定から銅-銅間の磁気的相互作用についても明らかにした。 (2)[CuX_2(pz)]_n(X=Cl,Br,pz=pyrazine) [CuCl_2(pz)]_n,[CuBr_2(pz)]_nともに銅-銅間を2つのハロゲンが架橋した一次元鎖を更にピラジンが架橋した二次元シート構造をとっている。磁化率の測定から塩素架橋錯体でJ〜-11.7cm^<-1>、臭素架橋錯体でJ〜-18.8cm^<-1>であり、銅-銅間に反強磁性的相互作用が働いていることが分かった。 この空間および電子構造解析から、局在スピンと伝導電子が関与する遍歴電子磁性系の銅-配位子の組み合わせについての重要な指針を得、錯体物性化学の分野で重要な貢献ができた。
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