研究概要 |
強い電子格子相互作用に特徴を持つ新しいハロゲン架橋一次元金属錯体の実現を目指し、構造的に揺らぎをもつ部分酸化型一次元金属錯体の作製を試みている。 ハロゲン架橋一次元ニッケル錯体について、ハロゲンイオンより大きなイオンサイズを持つ過塩素酸イオンを外圏イオンとするハロゲン架橋一次元ニッケル錯体の電解結晶化により平均Ni-Br距離が2.694(2)Åと一次元Ni^<III>-Br-Ni^<III>錯体に比べて約0.11Å長い結晶が昨年度に得られている。この結晶について、磁気天秤による磁化率測定を行ったところ、Ni原子数の約16%に対応するS=1/2のスピンが観測された。結晶構造からは平均Ni-Bi距離が単核Ni^<II>錯体でのNi^<II>-Br距離とほとんど一致することから、一次元Ni^<II>-Br-Ni^<IV>錯体であることが予想されたが、高スピンNi^<II>に対応するS=3/2のスピンは観測されなかった。 電解酸化に用いる溶媒をメタノール/エタノール混合溶媒から2-プロパノールに変えたところ、Ni-Br距離が2.640(1)Åと混合溶媒を用いた結晶に比べて約0.05Å短い一次元ニッケル錯体が得られ、X線写真上には構造の乱れに由来する超格子反射等は観測されなかった。単結晶構造解析も成功し、[M(en)_2][MX_2(en)_2](ClO_4)_4(M=Pt,Pd;X=Cl,Br)と結晶構造は同型であるが、架橋ハロゲンはNi原子間の中央に位置していることが明らかになった。この結晶についても磁化率の測定を行い、混合溶媒から得られた構造揺らぎが予想される結晶とその物性の比較を行う。また、PF_6^-などの嵩高い陰イオンを用いた場合についても結晶作成を試みる。このように構造揺らぎの生成が非常に微妙な構造変化により起こっていると予想され、一次元構造の詳細な構造解析と、物性との相関は今後の興味深い課題となりつつある。これらの結果について、現在論文の投稿を準備中である。
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