光学活性多核金属錯体のインターカレーションによる粘土層間不斉場の構築

1993 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05453048
• 研究機関: 北海道大学
• 研究代表者: 山岸 晧彦 北海道大学, 理学部, 教授 (70001865)
• 研究分担者: 荒又 明子 北海道大学, 触媒化学研究センター, 助教授 (80001717) ; 高橋 正行 北海道大学, 理学部, 助手 (50241295)
• キーワード: 粘土鉱物 / 不斉場 / 多核錯体

研究概要

本研究は、粘土鉱物を光学活性な多核錯体で化学修飾して粘土層間に不斉認識を行うような反応場を形成することを目的とした。本年度の結果は以下の通りである。
(1)光学活性な多核錯体の合成における“鍵"中間体として光学活性な[Ru(bpy)2C12]を合成する経路を確立した。すなわち光学活性な[Ru(bpy)3]C12をヂクロロメタン中で光分解してこの錯体を得ることができた。これを用いて現在光学活性な2核錯体を合成している。
(2)粘土に吸着した[Ru(bpy)3]2+の光化学的挙動を蛍光寿命の測定を行っている。この結果この錯体のエナンチオマーとラセミ混合物とを比較することによって、極めて低い吸着量においても立体選択的な会合体が形成されることが分かった。さらにこの会合体の構造が時間によって変化することも見いだした。
(3)粘土層間に光学活性な[Ni(phen)3]2+とアキラルな[Fe(terp)3]2+(terp=terpiridyl)を共存させて、後者の錯体に誘起CDが観測された。この誘起CDを理論的に解釈することを現在試みている。
(4)粘土を長鎖アルキルアンモニウムでイオン交換して有機化してクロロホルムに分散して水界面上に展開し、粘土単分子膜を得ることができた。現在この単分子膜の構造をX線回折、FT-IR、AFMなどの手法によって調べている。さらにこの単分子膜で修飾した粘土修飾電極も試みている。

研究成果

• [文献書誌] M.Kaneyoshi,A.Yamagishi & A.Aramata: "Adsorption & Spectroscopic Studies on Interactions of Co(14) Chelates with Clays" Clays and Clay Minerals. 41. 1-6 (1993)
• [文献書誌] K.Inukai,Y.Hotta,M.Taniguchi,S.Tomura,A.Yamagishi: "Formation of a Clay Monolayer at Air-Water Interface" Journal of chemical Society,Chemical Communication. (印刷中). (1994)
• [文献書誌] 山岸晧彦・佐藤久子: "粘土表面による分子認識-理論的アプローチ" 表面. 31. 375-387 (1993)
• [文献書誌] 山岸晧彦: "粘土層間の分子形状認識機能" SMECTITE(スメクタイト). 3. 19-30 (1993)
• [文献書誌] Akihiko Yamagishi Ed.by Kenzi Tamaru: "Dynamic Processes on Solid Surfaces" Plenum Publishing Corporation,London,UK, 340 (1993)