研究課題/領域番号 |
05453051
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
阿波賀 邦夫 東京大学, 教養学部, 助教授 (10202772)
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研究分担者 |
大塩 寛紀 東北大学, 理学部, 助教授 (66017865)
菅原 正 東京大学, 教養学部, 教授 (50124219)
奥野 恒久 東京大学, 教養学部, 助手 (50251327)
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キーワード | 金属錯体 / 磁性 / 光誘起相転移 |
研究概要 |
IPA(イソプロピルアンモニウム)・CuCl_3は50℃付近でのサーモクロミックな構造相転移に伴い、磁気的相互作用が反強磁性的から強磁性的に反転する珍しい分子結晶である。この系においては、電子状態と磁性との相関を明確にできるという点と、Fe^<2+>錯体で発見された光誘起相転移(LIESST現象)が発現するのではないかというふたつの期待から、紫外から近赤外・赤外までの吸収スペクトルの温度依存性を測定した。室温(反強磁性的低温相)で、近赤外1.3eV付近に強い吸収帯を見いだした。この吸収は、2.2eV付近の弱い吸収とともに、強磁性的な高温相になるとほとんど消失する。1.3eVの吸収は、従来はd-d遷移と考えられていたが、IPA・CuCl_3の結晶ではCu^<2+>イオンがハロゲン架橋により一次元鎖の形成しており、Cl^-イオンを介したCu-Cu間の電荷移動に基づくものとすれば、磁性の変化ともつじつまがあう。いずれにせよ、近赤外あるいは可視光のバンドに光照射することで低温相(低スピン状態)を選択的に励起できることが分かった。一方赤外線吸収スペクトルの測定から、IPAのNH変角振動が相転移にともない低波数シフトすることが分かった。相転移の微視的なメカニズムについて検討している。 現在、830nmの半導体レーザーおよびArレーザーにより、先に述べたふたつのバンドを選択して光照射を行い、LIESST効果の有無について調べている。
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