研究概要 |
本年度は、外部からの指令により固体表面の触媒作用のコントロールが可能な機構を有する固体触媒表面を得ることを目的とし、強誘電体単結晶に発生できる弾性表面波(Surface Acoustic Wave:SAW)として、128°YカットX伝搬LiNbO_3単結晶(レーリー波SAW)および41°YカットX伝搬と36°YカットX伝搬LiTaO_3単結晶(SH波SAW)にAg金属,Ni金属、および酸化物-金属の二層構造を持つ触媒(NiO/Ni)を10〜43nmの薄膜で接合した触媒素子を作製し、エタノール酸化反応に対する効果を調べた。SAWの効果は、SAW無印加時の触媒活性に対するSAW印加時の触媒活性との比Qで評価した。Ag金属触媒において、SAW印加の電圧を0〜2Wの範囲で変えて触媒活性に及ぼす効果を調べ、高い電気-機械結合係数を持つ41°YカットX伝搬強誘電体単結晶上のSAWが高いQの値を持つことを見いだした。また、伝搬路に接合した触媒の状態によりSAWの効果が異なることが示された。Ni触媒ではSAW印加時の活性増加はQ=1.6倍であるのに対し、(NiO/Ni)触媒ではQ=6倍と高い活性を与えた。また、反応中の酸素分圧を増加させた場合に、Ni金属触媒ではSAWを印加しても殆ど変化が見られないのに対し、(NiO/Ni)触媒ではQの値は4kPaで最大となり、それ以上の圧力では減少する特異的な変化を示した。Ni金属を酸化する温度が高いほどQの値は増加すること、および膜厚変化の結果より、二層構造中のNiOの割合が高いほどQが増加することが示された。SAWの活性増加効果と触媒表面状態との関係から、SAWが触媒に与える効果Qを触媒表面原子の格子変位、局所電場の発生、および音波-電子の相互作用に基づき説明した。本年度の結果から、弾性表面波が制御機能をもつ新しい型の触媒系の確立に有効なことが結論された。
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