研究概要 |
固体表面は化学反応を促進する優れた触媒作用を示すが、その機能をより精緻なものとするためには、固体表面の触媒作用を人為的にコントロールすることが重要である。本研究では、外部からの指令により固体表面の触媒作用のコントロールが可能な機構を有する固体触媒表面を得ることを目的とし、新しい手法として強誘電体単結晶に発生できる弾性表面波(Surface Acoustic Wave:SAW)を用いた。レーリー波SAW用LiTaO_3およびSH-SAWが発生できるLiNbO_3単結晶にAg金属,Pd金属、Ni金属、および酸化物-金属の二層構造を持つ触媒(NiO/Ni)を10〜43nmの薄膜で接合した触媒素子を作製し、エタノール酸化反応に対する効果を調べた。触媒表面の状態はX線光電子分光法により調べた。Ag金属触媒において、SAW印加の電力を変えて触媒活性に及ぼす効果から、高い電気-機械結合係数を持つ単結晶ほどSAWが高い触媒活性増加効果を持つことが示された。Ni触媒ではSAW印加時の活性増加は1.6倍であるのに対し、(NiO/Ni)触媒では6倍と高い活性を与えた。また、反応中の酸素分圧を増加させた場合に、Ni金属触媒ではSAW効果の違いは殆どないのに対し、(NiO/Ni)触媒ではSAWによる活性増加は酸素圧力に対し極大を示した。Ni金属の酸化温度および膜厚変化より、二層構造中のNiOの割合が高いほどSAWの効果が増加することを見い出した。Pd金属触媒の場合にも表面を酸化処理するとSAW効果が増加する結果が得られた。SAWの活性増加効果と触媒表面状態との関係から、SAWが触媒に与える効果を触媒表面原子の格子変位、局所電場の発生、および音波-電子の相互作用に基づき説明した。本研究の結果から、弾性表面波を用いることによって、制御機能をもつ新しい型の触媒系が確立できることが結論された。
|