表面力直接測定による高分子電解質層の研究

1994 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05453054
• 研究機関: 名古屋大学
• 研究代表者: 栗原 和枝 名古屋大学, 工学部, 助教授 (50252250)
• 研究分担者: 日比野 政弘 名古屋大学, 工学部, 助手 (00242834)
• キーワード: 表面力直接測定 / 高分子電解質 / 単分子膜 / LB膜 / 原子間力顕微鏡

研究概要

1.ポリメタクリル酸をブラシ状に並べた層について、表面力直接測定により高分子電解質層のイオン化、塩効果、2価イオンによる橋かけ効果等による膜の構造変化を明かにした。
2.分子内にイオン性とともに水素結合性を持つポリグルタミン酸基を親水基とする長鎖アルキル界面活性剤のLangmuir-Blodgett(LB)膜で雲母基板を修飾し、ブラシ状のポリグルタミン酸層を形成した。この単分子膜では、累積時の表面圧を変えることにより、α-ヘリックスやβ-シート等の2次構造を多く含む膜が調製できることがすでに定性的にわかっていた。定量的な評価のために、LB膜のFT-IRスペクトルにおける2次構造体の帰属を明かにし、透過ならびに反射スペクトルの強度からその配向を決定した。また表面力直接測定により、それぞれの2次構造に特徴的な表面の相互作用があることがわかった。その変形のしやすさを定量的に示すポリペプチド1分子層の圧縮弾性率を得た。イオン化した伸長鎖については0.2〜0.6MPa、水素結合性の配向した2次構造ではこれから1桁から2桁大きくなる。高分子1分子層の圧縮弾性率を世界ではじめて求めた例である。
3.原子間力顕微鏡による表面力測定が可能となり、電気二重層力を測定している。
4.たんぱく質の雲母上への吸着状態をFT-IRと原子間力顕微鏡で観察する手法を確立した。

研究成果

• [文献書誌] 栗原和枝: "表面力直接測定:ナノメーターレンジで、表面の相互作用を直接測ると?" 信学技報. OME92-49. 39-44 (1993)
• [文献書誌] 栗原和枝: "高分子電解質単分子膜表面の直接測定:表面力測定による構造の解明" 高分子. 42. 432-432 (1993)
• [文献書誌] 栗原和枝: "表面力測定法の新しい直接測定法-内部全反射顕微法" 化学. 49,No.6. 443-443 (1994)
• [文献書誌] 大草洋 他: "Chemical Modification of Molecularly smooth Mica Surface and Protein Attachment" Langmuir. 10. 3577-3581 (1994)
• [文献書誌] 栗原和枝 他: "Surface Forces between Monolayers of End‐Anchored Polyelectrolyte Layers:Structural Changes and Interactions" Proceedings of IUMRS‐ICAM‐93. 15A. 517-520 (1994)
• [文献書誌] 安倍隆 他: "Direct Measurement of Surface Forces between Monolayers of Anchored Poly(L‐glutamic acid)" J.Phys.Chem.99(印刷中). (1995)
• [文献書誌] 栗原和枝 他: "Elemental Analysis of Langmuir‐Blodgett Films by X‐ray Photoelectron Spectroscopy" Langmuir. 11(印刷中). (1995)
• [文献書誌] 栗原和枝: "表面力直接測定法とその生体機能理解への利用" 生物物理. (印刷中). (1995)
• [文献書誌] 栗原和枝: "Microchemistry:Spectroscopy and chemistry in small domains" Elsevier, 401-414 (1994)
• [文献書誌] 栗原和枝: "「コロイド科学」第4分冊:コロイド科学実験法(日本化学会編)" 東京化学同人(印刷中), (1995)