研究概要 |
これまで、橋頭位にケイ素を有するポリカルコゲナジシラビシクロ誘導体の合成とその構造決定に成功している。また、目的のトリチアジシラビシクロ[1.1.1]ペンタンとトリセレナジシラビシクロ[1.1.1]ペンタンの合成及びその構造についてもX線結晶解析により明かにできた。また、その結果より、ケイ素-ケイ素原子間距離は、セレンでは2.515Åであり、硫黄では、2.407Åとなっていることがわかった。これらの値は、ケイ素-ケイ素原子間に結合がないにもかかわらず、その距離が単結合に匹敵するほど短い。本年度は,主にゲルマニウム類似体の合成と反応について検討した。ケイ素の場合と同様に、非常に嵩高いトリストリメチルシリルメチル基を有するトリヒドロゲルマンと単体硫黄又はセレンを反応させることにより、それぞれ対応するポリチアジゲルマビシクロ[k.l.m]アルカン(k+l+m=7,6,5,4)及びポリセレナジゲルマビシクロ[k.l.m]アルカン(k+l+m=6,5,4)を得ることに成功した。また、それらのX線結晶構造解析より、それらの構造を明らかにすることができた。それぞれ、ヘプタチアジゲルマビシクロ[3.3.1]ノナン、ヘキサカルコゲナジゲルマビシクロ[3.2.1]オクタン、ペンタカルコゲナジゲルマビシクロ[2.2.1]ヘプタン、テトラカルコゲナジゲルマビシクロ[2.2.1]ペンタンであることが判った。特に、ケイ素類似体の場合には得られなかったヘプタスルフィドやヘキサセレニド、ペンタセレニドがゲルマニウムの場合には、安定に単離できたことも興味深い。また、これらの脱カルコゲン化反応を検討することにより、目的のトリチアジゲルマビシクロ[1.1.1]ペンタンとトリセレナジゲルマビシクロ[1.1.1]ペンタンの合成に成功した。X線結晶構造解析より、トリセレナジゲルマビシクロ[1.1.1]ペンタンのゲルマニウム-ゲルマニウム結合距離は、2.672Åとなっており通常の単結合距離にほぼ匹敵するものであった。
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