高配位典型元素を有する含酸素4員環化合物の合成とその分解反応の機構

1994 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05453062
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 川島 隆幸 東京大学, 大学院理学系研究科, 助教授 (80011766)
• キーワード: 4-配位1,2-オキサチエタン / 4-配位1,2-オキサセレネタン / X線結晶構造解析 / 擬三方両錘構造 / 異性化反応 / 硫黄イリド / Corey-Chaykovski反応 / 解離平衡

研究概要

1.4配位1,2-オキサチエタンの合成については、まず、Martinリガンドを有するビスヒドロキシル体、o-HO(CF_3)_2CC_6H_4SCHRCPh_2OH(R=H,Ph)を合成した。次に、トリエチルアミン共存下、硫黄原子上を臭素で酸化し、環化することで目的化合物、S[-O(CF_3)_2CC_6H_4-](-CHRCPh_2O-)、を合成することに成功した。R=Hの場合には加水分解し易かったが、R=Phの場合には無色結晶として単離することができた。X線結晶構造解析の結果、二つの酸素原子がアピカル位を占め、二つの炭素原子と孤立電子対がエクアトリアル位を占める擬三方両錘構造をしていることが分かった。また、3-位のフェニル基は孤立電子対と同じ側を向いた(E)体であることが明らかとなった。CDCl_3中脱気封管し、155℃17時間加熱し、反応を^<19>F NMRで追跡したところ、硫黄イリドとベンゾフェノンとの解離平衡による(E)(Z)の異性化が認められ、その比を保ったまま、分解生成物を与えることが分かった。生成物はフェニル基の転位したケトン、PhC(O)CHPh_2(47%)と対応する環状スルフェン酸エステル、S[-O(CF_3)_2CC_6H_4-](52%)、および Ph_2C=O(33%)と対応する6員環チオアセタール、[-O(CF_3)_2CC_6H_4SCHPh-](31%)、であり、Wittig反応生成物のオレフィンは全く得られなかった。さらに興味あることに痕跡量ではあるがCorey-Chaykovski反応生成物のトリフェニルオキシランが得られてきた。2.4配位1,2-オキサセレネタンの合成については、同様にしてSe[-O(CF_3)_2CC_6H_4-](-CH_2CPh_2O-)を合成することができた。X線構造解析からオキサチエタンと類似の構造を持つことが明らかになった。これらの結果の一部については速報として報告した。

研究成果

• [文献書誌] T.Kawashima: "Synthesis and Crystal Structure of an Intermediate of the Germanium-Peterson Reaction" J.Org.Chem.59. 491-493 (1994)
• [文献書誌] T.Kawashima: "Synthesis,Structure,and Thermolysis of a 1,5-Dioxa-4λ^5-phosphaspiro[3.3]heptane:A Novel Pentacoordinate 1,2-Oxaphosphetane" J.Am.Chem.Soc.116. 4509-4510 (1994)
• [文献書誌] T.Kawashima: "Intramolecular Dehydration of β-Hydroxyalkylphosphonic Acid Monoesters.A Novel Type of Olefin Synthesis" Chem.Lett.1483-1486 (1994)
• [文献書誌] T.Kawashima: "Synthesis,Isolation,and Thermolysis of Tetracoordinate 1,2-Oxaphosphetanes Stabilized by Steric Protection 21GC04:Chem.Lett." 1289-1292 (1994)
• [文献書誌] T.Kawashima: "Synthesis,Structure,and Thermolysis of a Tetracoordinate 1,2λ^4-Oxathietane" Angew.Chem.,Int.Ed.Engl.33. 2094-2095 (1994)
• [文献書誌] T.Kawashima: "Synthesis and Structure of a Pentacoordinate 1,2-Oxagermetanide" J.Organomet.Chem.(in press).