研究概要 |
1.オキサホスフェタンについてはまず、Martinリガンドを導入することで、3-位にカルボニル基を持つオキサホスフェタンの最初の例である化合物を安定に合成・単離することに成功した。さらに検討を加え、二つのオキサホスフェタン環を有する新規なスピロホスホランを合成することができた。2.Peterson反応中間体、5配位1,2-オキサシレタニドについては、Martinリガンドを有するビニルシランへのt-BuLiのMichael付加、続く、ヘキサフルオロアセトンやベンズアルデヒドの反応でβ-ヒドロキシアルキルシランを合成した。これをn-BuLiまたは18-クラウン-6存在下のKHで脱プロトンすることで合成できた。カリウム塩は空気中室温でも安定な無色針状結晶として得られ、X-線結晶構造解析により少し歪んだ三方両錘構造をしていることが明らかになった。これらは、加熱により相当するオレフィンを定量的に与えることからPeterson反応の中間体であることがわかった。さらに、スズ-Peterson反応およびゲルマニウム-Peterson反応中間体の合成についても成功した。前者はMartinリガンドが無しで合成できた。3.16族元素であるイオウおよびセレン化合物について検討し、それぞれ、4配位1,2-オキサチエタンおよびオキサセレネタンを合成することができた。構造は14および15族化合物と類似した擬三方両錘構造であることがX線構造解析から分かったが、それらの熱分解ではWitting反応生成物であるオレフインは全く得られず、カルコゲン原子とアピカル酸素結合のイオン的解裂に基づく転位反応などが起こり、14および15族化合物とは対照的な結果となった。オキサチエタンの場合には痕跡量のCorey-Chaykovski反応生成物のオキシランが生成し、その反応機構に関する新たな知見を得た。これらの結果はいずれも速報として報告した。
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