研究概要 |
金属イオンの溶媒抽出速度における液液界面の役割を明かにすることを目的として本研究を行ない、平成5年度は以下のような知見を得た。 1.フォトダイオードアレイ分光光度計を検出器とする高速撹拌法により、5-ノニルサリチルアルデヒドによるニッケル(II)の抽出速度と試薬の界面吸着量の同時測定を行なった。抽出初速度のニッケル(II)イオン濃度、水素イオン濃度、および試薬の界面吸着量への依存性により、界面における1:1錯体の生成過程が律速段階であることを明らかにした。 2.また、同法により、ブチルジチゾンと1,10-フェナントロリンによるニッケル(II)の協同抽出速度の測定を行ない、抽出反応の中間体としての界面吸着化学種の存在を明らかにした。そして、その生成速度と消失速度を解析し、速度定数を決定した。 3.界面反応の直接吸光光度測定法として、撹拌光学セル法とテフロンキャピラリープレート法を開発した。前者は、撹拌分散状態の二相を薄型セル内に連続循環した状態で、後者では、テフロンプレートのキャピラリー中に有機相を保持させ、水相内に固定した状態で、ともに界面および有機相の透過吸収スペクトルを測定するものである。これらの方法により、界面におけるテトラフェニルポルフィリン(TPP)のプロトン付加反応が測定された。 4.テフロンメンブランフィルターに有機相を含浸させ、酸水溶液と塩化カリウム水溶液で挟み、両側に直流電場を印加すると、酸水溶液側で起こるTPPのプロトン付加反応が制御できることを見出した。この現象は、新しい界面反応の制御法として展開できるものと考えられる。
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