研究概要 |
[I]新規分子設計、合成した陰イオン性の多機能型イオン会合性試薬は次の(a)〜(d)4種の類縁化合物である。(a)【chemical formula】 R=CH_3,…C_8H_<17>- (b)【chemical formula】 X,Y=C_6H_5-,NO_2-,Cl-,CF_3- (a)の誘導体22種の内、炭素数がC_5-以上のものについては、界面活性能が大きく90%以上の純度は困難であったが、多機能型イオン会合試薬として分析化学的有用性は非常に高いことが分かった。Xとしてニトロ基、メチル基のものを合成した。(b)では-O^-の両隣のo-位にハロゲン、メチル基を導入した。更にZとして、ニトロ基を持つ試薬を合成し、25種の誘導体を得た(これらの試薬の純度はいずれも98%以上であった)。 (c)【chemical formula】 X,Yにハロゲン、メチル基を導入した試薬6種を合成した。純度はいずれも95%以上のものが得られた。 (d)ヘキシル(2,4,6,2',4',6'-hexanitrodiphenylamine)の類縁化合物5種を合成した。 [II]新規合成試薬について、基本的物理化学的性質(水溶液での存在種間の平衡定数、速度定数、液-液二相間分配平衡定数)について調べ、これらの性質に及ぼす置換基の寄与に関する新しい知見を得た。試薬(a)は水溶液中で疎水性陽イオンとイオン会合し、明瞭なブルーシフトを示した。この特性はアルキル鎖長とも密接に関連している。試薬(b)ではニトロ基導入により、レッドシフトし、モル吸光係数も大幅に向上した。この傾向は、導入したニトロ基の数が増加するに従って顕著になることも見いだした。試薬(c)は水溶液中でも非常に安定で、しかもモル吸光係数は約10万と優れた感度を示した。試薬(d)はクラウン化合物の共存下、アルカリ金属イオンと極めて難溶性の沈澱を形成することを見いだした。 キャピラリー電気泳動法により、合成した染料陰イオンのフリーゾーンでのイオン移動度、オニウムイオン存在下でのイオン移動度を求め、イオンの分子構造、形状との関連、陽イオンとのイオン会合性と構造、形状に関する有用な知見を得た。これらの知見を分子設計にフィードバックし、新たに理想的試薬の合成も始めている。更に、陽イオン性の試薬の合成も開始し、測定と同時進行させている。
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