研究概要 |
陽イオン性の多機能型イオン会合試薬,二種類を合成し,前年度合成分も含め分析化学的研究を行なった。 1.アゾ系染料イオンの設計・合成 1-アルキル-4-[4-(ジアルキルアミノ)フェニルアゾ]ピリジニウムイオン(アルキル基:メチル〜ブチル基)を合成し,水溶液内イオン会合,二相間分配平衡について検討した。これらは化学的に安定で,大きなモル吸光係数を示した。イオン会合抽出試薬として極めて優れ,特にスルホン基を持つキレート陰イオンを定量的に抽出できる唯一の試薬である。新規開発の高速撹拌装置を用いて,水相-有機相界面への吸着挙動についても検討し,メチルオレンジ系試薬との界面におけるイオン会合反応の解析に成功した。 2.トリフェニルメタン系色素の設計・合成 一価染料イオンのMG,BG型を合成した。中心炭素近傍にかさ高い置換基を導入すれば,化学的に安定な試薬となることを分子モデリングから設計した。実際に,-C1,-Br基を導入したC1-MG,Br-MG,C1_2-MG,C1-BG,Br-BGを合成し,トリフェニルメタノール生成反応を検討し,非常に安定であることを実証した。MG,BG,PR,CV,EVも含め,水溶液内の平衡,速度及びイオン会合体の二相間分配平衡に関する検討を行い,分析試薬としての特徴的知見を得た。新規合成試薬とヘテロポリ酸イオンとの反応検討結果,この種の水溶液内イオン会合発色反応の分析化学的有用性が実証された。更にイオン会合体の膜吸着挙動についても検討した。 3.水溶液内イオン会合により鋭敏に吸収スペクトル変化を示す合成試薬を用いて,イオン会合反応を検討した。プロトン付加・脱離/イオン会合を利用する水溶液内発色反応の検討も終え,高い分析化学的応用性を認めた。 4.キャピラリー電気泳動法(HPCE)による移動度情報がイオンの疎水性パラメータとして利用できる事を示し,更にHPCEによる水溶液内イオン会合反応解析法を確立し,1価-1価,キレート陰イオン-R_4N^+反応の解析に成功した。
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