多機能型イオン会合試薬(陰イオン4種、陽イオン二種の誘導体)を合成した。主要な機能として、(1)定量機能-高感度化、(2)分離機能-イオン会合抽出性、(3)イオン会合機能-水溶液内イオン会合性、(4)疎水的相互作用機能、(5)利便的機能-水溶性、化学的安定性、合成の容易さ、を目的とした。これらの機能を持つ試薬を設計・合成し、検討した。 1.陰イオン性試薬 -SO_3^-を持つアゾ系染料(約20種)、水酸基を持つポリニトロアゾ染料(約25種)、トリフェニルメタン系染料(6種)、ポリニトロジフェニルアミン系染料(7種)を合成し、機能発現に関する基礎検討を行った。 2.陽イオン性試薬 アルキル-N-アルキルピリジニウム系試薬(約25種)、アゾ系染料(約10種)、トリフェニルメタン系染料(5種)を合成し、機能発現の基礎検討を吸光光度法、ストップフロー法、高速撹拌界面吸着法で行った。 3.新規陰イオン試薬の中では、長鎖アルキルアミノ基、-SO_3^-をもつアゾ系試薬が、機能(1)〜(5)を満足する優れた試薬である。-OH基、3つのニトロ基を持つアゾ系試薬はイオン会合による長波長シフトする興味深い試薬である。中心炭素近傍にハロゲン置換した4C1-2C1は五つの機能すべてを満足し、TBPEに取って代わりうる試薬である。新規陽イオン試薬の中では、中心炭素近傍にC1二つ持つ、C1_2-MGがすべての機能を満足する優れた試薬であった。 3.新規試薬と用いて、水溶液内イオン会合、二相間分配平衡、界面吸着、膜吸着について分析化学的観点からの検討を行い、界面活性剤の高感度定量法・自動化迅速定量法、リン、シリカの超微量定量法、アルカリ金属イオンの吸光光度法・フローインジェクション分析法等実際分析への適用性についても検討した。 4.キャピラリー電気泳動法(CE)による移動度情報がイオンの疎水性パラメータとして利用できる事を示し、更にCEによる水溶液内イオン会合反応解析法を確立し、1価-1価、キレート陰イオン-R_4N^+反応の解析に成功した。
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