レーザー光の様々な特性によって誘起される光学効果を積極的に活用し、さらに他の光学効果の複合的組み合わせにより、新たな分光分析法の開発を検討した。またこれらの天然水分析への応用を行った。 1)液晶系における熱レンズ効果:熱レンズ効果は、空間分布がTEM_<00>のレーザー光によって誘起される光学効果であるが、分子が一定方向に配列した液晶系について、熱レンズの焦点特性をデュアルビーム法により明らかにした。この結果液晶の配向軸方向に凹レンズ、その垂直方向に凸レンズとなるような熱レンズが生成すること、この焦点変化は、プローブに用いるレーザー光の偏光面によって検知されることがわかった。さらに無秩序な溶液系に比較して三倍程度の大きさの熱レンズ効果が得られることを示した。 2)磁性流体希釈懸濁液における磁気光学効果をもちいる分子構造認識に関する研究:磁性流体は、強磁性体微粒子を界面活性剤によって溶液に分散させたものであるが、この希薄懸濁液に様々な色素を共存させた時に生ずるレーザー蛍光の磁場変化を調べた。この結果アントラセンなどの多環式芳香族について、メチルなどの置換体について、異なる磁場変化特性を示すことを見出した。 3)多光子イオン化(水和電子の発生)過程の天然水への応用:YAGレーザーの第3高調波を天然水に照射することによって、溶存有機物の光誘起特性とくに水和電子発生過程について調べた。この結果陸水と海水では、極めて大きな差があり、溶存有機物のキャラクタリゼーションに活用できることを示した。このほか硝酸から亜硝酸への光化学的還元法を確立し、旧来の方法に比較して無汚染的に硝酸を分析できるようにした。またシランの化学発光による天然水中のケイ酸の定量への応用も図った。
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