本研究では、電気化学原子間力顕微鏡(AFM)の開発による電極反応過程における電極表面のキャラクタリゼーションについて基礎検討を行った。3電極方式により、電位規制あるいは電流規制電解中の電極表面をAFM測定した。作用電極には、構造規制グラファイト(HOPG)、鏡面研磨白金、鏡面研磨グラッシーカーボンおよび光透過性ITO電極等を用いた。 まず、HOPG電極表面を10mM-KCl及び-KNO_3水溶液中で酸化、還元処理を行って、電極表面構造に与える影響を詳細に観察した。その結果、KCl溶液中では電解処理による表面構造の変化は観られなかったが、KNO_3水溶液中で酸化処理すると、表面構造が大きく乱れて電極炭素の部分的酸化、及びインタカレーションによる層間での気体発生などが観察された。これらについては電気化学STM測定においても同様の結果が得られた。 次に、各種電極上への微量水銀、銀、鉛などの電析による薄膜形成過程について詳細な観察を行った。例えば、水銀は白金上には微小球に分布析出するのに対して、銀は一様な薄膜を形成、鉛析出膜では粒界が観察された。 電極反応初期過程をin situで、かつ原子レベルの分解能で観察することが大目標であったが、光てこ方式AFMは液面の影響が大きく液中原子レベルでの測定が困難であった。そこで新しく光干渉型観測ヘッドへの改良について検討を重ねてきた。カンチレバ-の励振方法や共振回路、安定で高感度な周波数検波回路等の開発要素が多くあり、それらを克服していくのに大変手間取ったがようやく完成の見通しが得らた。また、研究代表者が本研究期間中に配置換えになったことも加わり、本研究報告書の提出が遅れたが、本研究は大きく進展してきている。
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