研究概要 |
本年度は本研究計画の初年度であるので,まず典型的な超イオン導電体の化学熱力学データベースの調査検討を行った。とりわけ申請者が既に精密熱容量測定を行ってきたAgCrS_2,CuCrS_2,NaCrS_2,Rb_4Cu_<16>I_7Cl_<13>,Ag_8GeTe_6,Cu_8GeTe_6,Cu_3BiS_3,PbSnF_4などについてはさらに詳細な解析を進めた。これらの研究成果については1992年秋の第9回固体イオニクス国際会議,日本化学会第66秋季年会,第29回熱測定討論会,第19回固体イオニクス討論会等において発表した。 極低温用精密熱量計の製作については,^3Heクライオスタットを購入し,冷却テストを行い0.3Kに至る温度領域での運転が可能であることを確認した。これを用いて精密熱容量測定を行うため,温度計測部,断熱制御部,エネルギー測定部および装置全体の温調部について製作にとりかかっている。極低温での精密測定に不可欠な精密温度計測および断熱制御部については自作する必要があり,試行錯誤を繰り返しているが,ほぼ当初の目標を達成できる見通しがついた。今後直ちに標準試料を用いたテスト運転を実行する予定である。なお15K以上室温に至る温度領域での既設の断熱型熱量計による精密熱容量測定についても,YSZなど典型的な試料についての研究を続行している。 また低励起モードについては,格子力学に基づく計算をはじめ,分子動力学的手法など理論的解析について検討をはじめるとともに,中性子回折および中性子散乱実験の実行についても計画している.なおモデル物質として最適な試料の選択についても,試料合成の試みを続行している。
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