研究概要 |
前年度に引き続き,ア-ジャロダイト化合物などのカチオン系超イオン導電体や,Y_2O_3の含有量を0〜10モル%の範囲で変えたYSZなどのアニオン系超イオン導電体についで,断熱型熱量計を用いた精密熱容量測定を中心とした熱力学的研究を行った.またヘリウム3クライオスタットを用いた極低温用小型熱量計の製作を遂行し,運転に成功した.これらの研究成果は,日本物理学会1994年秋の分科会,第30回記念熱測定討論会,第20回固体イオニクス討論会などで口頭発表するとともに,既に3報の論文として発表し,さらに投稿準備中である. 極低温用小型精熱量計の製作については,0.5Kに至る温度範囲での作動を確認し,試料の熱容量測定に必要な,空セル熱容量,シリコンオイル熱容量等の測定を終了し,さらにYSZ焼結体試料の測定を行い,詳細な解析を行っている. YSZについては,Y_2O_3の含量を0,2,4,8.10モル%と変えた粉末試料のICP分析をはじめとするキャラクタリゼーションを終え,粉末X線回折およびラマン散乱による結晶構造ならびに格子振動の解析を行った.精密熱容量測定に結果と合わせて本格的な解析を進め,Y_2O_3の含量の増加とともに化学式量単位のモル熱容量は増加するが,原子数単位に変換すると8モル%で極大を示すことがわかり,格子振動に関する特性振動数と酸素欠陥濃度の相関関係を明らかにすることができた.また極低温領域では,低エネルギー励起による熱容量異常の定量的な解析を進めることができた.さらにYSZの焼結体試料についても研究を進めた結果,粉末試料との興味深い差違を見い出した.以上の研究の結果,格子振動と酸素欠陥構造および低エネルギー励起について,さらに,詳細な解析が可能となった.
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