研究概要 |
平成5年度の研究において、Al-Li系合金を窒素気流中、800-1100℃の温度領域で加熱すると、合金メルト中への窒素の拡散が進行することが判明した。この場合、Li成分量が2.3,5.0wt%では自己発熱を伴う急激な窒化の促進が認められるが、Li成分量が少ないと、窒化反応は緩慢に進行することを明らかにした。平成6年度は、Al-Li合金についてとくに低濃度Li含有合金に関してさらに詳細な研究を行い、Liが窒化に及ぼす影響及びその反応機構について検討した。具体的には、Al-1.0wt%Li及びAl-0.5wt%Li合金を用いて実験を行った。 その結果、いずれの組成においてもゆっくりした窒化反応が進行し、例えば1000℃,5時間では1.0wt%Liの場合が28.2%、0.5wt%Liでは12.6%と極めて低い反応率を示した。そこで、さらに長時間の窒化処理を行った結果、1.0wt%Li試料では30時間、0.5wt%Li試料では40時間でほぼ100%の反応率に達するのが認められた。これらの反応系では、Alの窒化反応に特有の急激な発熱現象は認められなかった。反応後の試料断面に対してX線回折を行ったところ、両試料ともAlは反応時間と共に減少し、30時間後に消滅した。0.5wt%Li試料で100%反応した40時間後試料では、不純物酸素も内部まで拡散したためAlNのほかにα-Al_2O_3の生成が認められたが、1.0wt%Li試料においてはAlN単一相であることが確認された。このような窒素の内部への拡散は、合金の表面近傍に存在するLiが窒素中の不純物酸素と反応してLi_2Oやリチウムアルミネートを生成し、合金成分中のLiに濃度勾配ができることに由来するものと推察された。さらに、反応生成物の解析や反応速度論からの検討も行い、さらに反応機構について言及した。
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