研究概要 |
Alの窒化反応は熱力学的に発熱反応であり、自己燃焼を可能にする反応系である。Al合金メルト中への窒素拡散のためのオープンチャネルを形成させ、窒化反応を促進させることを基本原理としたAlNの合成法の検討を目的として研究を行った。 実験試料としては、高純度Alと含有料の異なるAl-Li,Al-Ca,Al-Yなど種々のAl合金を使用した。各素材をブロック形状に切断して、これを窒素気流中で700-1400℃の温度範囲でメルトさせ、窒化反応速度とその形態を観察した。その結果、Al単味とAl-Y合金試料では表面に数10μm程度のAlN膜が形成するにとどまったが、Al-Li系やAl-Ca系の合金を用いた場合は、その組成と加熱温度に応じて窒化反応の促進が認められた。特に、2.3wt%Li,5wt%Caの合金を窒化処理した場合は、自己発熱を伴って窒化反応が瞬時的に完了することが確認された。これは、窒素気流中の微量酸素がLiやCaと反応して、表面に酸化物を生成するため、メルト中の合金成分が表面部へ滲出し、そのカウンターとしてメルト中に窒素が拡散することによるものと推察される。生成物内部は粒径約1μmのAlN粉末からなり、合金成分は内部には存在しないことも判明した。一方、Li成分量が少ない場合には、自己発熱を伴わない緩慢な窒化反応が進行した。例えば、1.0wt%Liでは1000℃,5時間で28.2%、0.5wt%Liでは同じ焼成条件で12.6%と極めて低い反応率を示した。しかし、長時間の窒化処理を行った結果、1.0wt%Liでは30時間、0.5WT%Liでは40時間でほぼ100%の反応率に達するのが認められた。反応後の試料内部に対してX線解折を行ったところ、0.5wt%Liで100%反応した40時間試料では、不純物酸素が内部まで拡散しAlNのほかにα-Al_2O_3の生成が認められたが、1.0wt%Li試料においてはAlN単一相であることが確認された。 このように、合金成分の含有量によって二つの異なった窒化挙動が認められたことは、新しい興味深い知見であり、今後新プロセスとしてのその展開が期待される。
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