セラミックスの靭性と導電性の向上を主な目的として、多孔質セラミックス中へ金属イオンを放電電着させる金属電析法を検討した。この方法は(1)金属を溶融する必要がなく、操作が容易である、(2)セラミック多孔体の細孔構造が最終の金属/セラミックス系材料の組織を制御する、(3)通電量の制御により金属/セラミックスの傾斜化が可能という特徴を有する。本研究では、硝酸ニッケル/尿素/エチレングリコール/硫酸アンモニウム混合水溶液に110〜300mAの直流波、パルス波及び円錐波電流を通電し、気孔率38-63%の多孔質アルミナにニッケルを充填した。電析したニッケルの重量は電析時間の0.22-0.64乗に比例した。ニッケルの電析速度はパルス波、円錐波より直流波に対して高く、また高い気孔率のアルミナで高かった。電解浴の液温(25°-60℃)、硝酸ニッケルの濃度(0.05-0.5M)、電位勾配、アルミナ上に形成した電極の種類(金蒸着膜、金ペースト)はニッケルの電析速度に大きな影響を与えなかった。パルス波、円錐波の使用は、直流波を用いた多孔質アルミナ中で観察されたニッケルの樹枝状成長を抑制し、ニッケルが均一に充填された組織を与えた。アルミナ直方体の二面にニッケルを電析させた試料はアルゴン雰囲気中、1350℃で相対密度93-94%に緻密化した。複合材料の98Nにおけるビッカース硬度は、ニッケルを含有する表面領域では17.5GPaで、それより内部では徐々に硬度は上昇し、アルミナ側では21.5GPaに達した。これはアルミナよりニッケルの硬度が低いことと表面からニッケル量が徐々に減少した傾斜材料になっているためである。複合材料はアルミナ単体より強度が高く、破壊に至るまでの変形量が大きい非線形破壊挙動を示し、セラミックスの靭性を向上できた。現在、この材料の破壊挙動の詳細な解析と導電性について実験を行っている。
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