研究課題/領域番号 |
05453083
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
八田 有尹 東北大学, 工学部, 教授 (70005502)
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研究分担者 |
鈴木 裕史 東北大学, 工学部, 助手 (50236022)
和田山 智正 東北大学, 工学部, 助教授 (20184004)
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キーワード | 表面プラズモン / 表面ポラリトン / ラマン散乱 / 振動スペクトル / 鉄ペンタカーボニル |
研究概要 |
表面プラズモンポラリトン(SPP)励起により、表面化学種からのラマン散乱強度を増大させることが可能となる。Fe(CO)_5の光・熱分解によりFeが析出することが知られているが、その過程の詳細は明らかにされていない。本研究は、この過程をラマン散乱の測定により明らかにしようとするものである。SPPの励起が起こると予想した入射角の近傍において低温の銀回折格子上でのFe(CO)_5薄膜のラマン測定を試みたが、回折格子の冷却が十分行なえなかったので、シリコンウエハ-に蒸着した銀の島状膜上でのラマンスペクトルを測定した。この基板を140Kまで冷却した後、Fe(CO)_5ガスを試料室に導入して薄膜とし、270Kまでの温度上昇に伴うラマンスペクトルの変化をCCD検出器により測定した。しかし、ラマンピーク強度は加熱により減少するのみで、新たなピークは検出されなかった。従って、加熱に伴う重合反応Fe(CO)_5→Fe_2(CO)_9やその他のクラスター形成反応は起こらないことがわかった。これは昨年度の光照射の結果とやや異なる。比較的平坦なAg表面におけるFe(CO)_5薄膜のペクトルは極めて強度が弱く、バンドの同定を行なうことが困難であった。他方、上記の島状蒸着Ag表面では、解析に十分な強度のラマンスペクトルが測定できた。このラマン強度の増大には島状粒子の局所的表面プラズモンの励起が大きく寄与していると考えられる。この場合には回折格子表面でのSPPとは異なり、表面から数nm程度までの領域にある分子からのラマン散乱が増大することが報告されている。それゆえ、上記の結果もその範囲にある分子に基づくものと推察される。今年度の成果として、この局所的なプラズモンの利用が膜成長過程の初期段階であるとされる表面吸着の形態あるいは結合状態を明らかにする手段として有効であることが実証された。
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