研究概要 |
BaCeO_3系酸化物焼結体のイオン導電性と諸物性を検討するために、BaCeO_3のCeの一部を種々の三価のカチオン(Yb^<3+>,Y^<3+>,Dy^<3+>,Gd^<3+>,Sm^<3+>,Nd^<3+>)で置換した酸化物固溶体を合成した。これら固溶体の導電率は、ドーパントカチオンの種類により大きく異なり、イオン半径が0.9〜0.95A付近で最大を示し、ドーパントカチオンとしてはCe^<4+>よりわずかに大きなイオン半径を持つものが適していることがわかった。また、どのドーパントカチオンでも、置換量が20mol%までは導電率が増大し、それ以上置換すると逆に減少した。次に、これら固溶体の導電種を明らかにするために、水素-空気燃料電池を構成し、アノードとカソードで発生する水蒸気量を静電容量式露点計で測定した。いずれの固溶体でもプロトンと酸化物イオンが導電に関与しており、温度が高くなるにつれプロトン導電体から酸化物イオン導電体へと移行した。また同じ温度でもドーパントカチオンのイオン半径が大きくなるほど、酸化物イオン導電性が顕著になった。これは、イオン半径の増加とともに結晶格子の隙間が広がり、酸化物イオン空孔の動きが容易になるためである。この際、燃料電池の出力特性は、導電率の高かったBaCe_<0.8>M_<0.2>O_<3-α>(M=Y^<3+>,Dy^<3+>,Gd^<3+>)が高い出力密度を示し、交流抵抗と直流抵抗がよい一致を示していることがわかった。 続いて、BaCeO_3系酸化物焼結体の電気化学的反応器への応用として、導電率が高かったY^<3+>ドープの固溶体を隔壁に用い、エタンの脱水素反応を行った。アノードにエタン、カソードに酸素を導入し直流を通電すると、アノードでエチレン量が増大し、エタンの脱水素反応が電気化学的に促進されることを確認できた。また同様に本反応器がメタンの二量化反応にも有効であることがわかり、今後様々な気相化学反応に適用できる可能性を示していた。
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