研究概要 |
実施計画に記したように本研究で目的とした多孔質電極の作成は,1.ニッケル-ポリマーの電解共析,2.ニッケル-ポリマー複合材の酸化過程の検討,3.ニッケル多孔質電極の作成と電極特性の解析,の3つの過程に分けられるが,これまでに1,2,の過程で以下のような成果が得られている. 1.ではスルファミン酸ニッケルめっき浴を基本めっき浴として,これにポリマーとして水溶性ポリエーテルアミン(分子量約400)を20g/l,浴温は50℃,電流密度を30A/cm^2としたときにポリマー共析量の多い複合電着膜が得られた.2.では共析したニッケル-ポリマーの複合電着膜を1450℃酸素雰囲気で70時間酸化すると,ポリマーの酸化除去と同時にマトリクスのニッケルも完全に酸化する.高温酸化後の試料を,水銀圧入法によって多孔度分布の測定を行った結果,電解条件の変化とともに複合電着膜中のポリマー量は変化し,膜の比重も5.25〜8.89g/cm^3と大きく変化した.示差熱分析の結果,ニッケル中に共析したポリマーは,300℃で電着膜中から除去されることが分かった.高温酸化終了後の試料の走査型電子顕微鏡による破面観察から0.05〜数μmの細孔の形成が確認でき,従来の製法によるものより小さい孔径のものが得られることが分かった.また,電着時の浴条件の変化により孔径や孔分布が変化し,多孔度の制御が可能であることが確かめられた. このように電析による金属-有機物複合材から作成した多孔質電極は,単にニッケル酸化物から作成した多孔質電極よりも多様な孔径の分布が得られたので,現在,1,2で得られた結果を基に最終工程である燃料電池用多孔質電極としての特性を検討しつつある.本研究の一部の発表はこれまでの冶金学的方法では作り得ない多孔質電極の新しい製法として評価を受けている.
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