本研究は、回転円板上の境界層厚さは一定であることに着目して、基板回転型のCVD装置を開発することを目的とし、この基礎研究として回転円板に垂直に流体が流れる場合の流れ場、温度場について検討した。 実験装置は、円筒容器上面に回転円板、下部に多孔質板を設置した構造で、流体は多孔質板を通して回転円板上に垂直に流した。円板の回転数、及び円板に垂直に流れる流体の速度、及び円板の温度を変化させて、伝熱の実験を行ない、円板一流体間の伝熱係数の測定、及び可視化を行なった。また、装置全体を上下逆にすることにより、浮力の影響について検討した。 回転円板の回転数が小さいときの伝熱係数は淀み点流れの解析解の値と一致し、回転数が大きくなると、無限回転円板の解析解の値と一致するようになった。これらの場合、境界層厚さが場所に依らず一定であることがわかった。さらに回転円板の回転数を大きくすると、半径位置の大きいところの局所伝熱係数が、無限回転円板の解析解の値よりも小さくなった。この原因は、多孔質板と円板の間の、半径位置の大きいところに大きな循環流が存在し、有効な伝熱を抑制してるためであることがわかった。さらに回転円板の回転速度を大きくしたときには、半径位置の大きいところは流れが乱流になり、局所伝熱係数が非常に大きくなることがわかった。 円板が下向きのときには浮力の影響はほとんどなく、円板が上向きのときには円板と流体の温度差がある値を越えると自然対流が伝熱に対して支配的になることがわかった。自然対流支配の時、局所伝熱係数は場所に依らず一定で、その値は水平平板からの自然対流の実験式と一致することがわかったが、壁面温度がゆっくりと温度変動しており、この時流れが不安定であることがわかった。 レーザードップラー流速計を用いた速度分布の測定を進行させているが、現在まとまった結果はでていない。
|