研究概要 |
高分子ゲルの中に酵素を固定すると、網目間隔を制御することにより、目的の物質のみネットワークの網目を通過させることができることから、きわめて選択性の良い反応を行わせることができる。しかし、高分子ゲルの体積(ネットワークの網目間隔)を予測することは極めて困難である。そこで平成5年度は、感温性のN-イソプロピルアクリルアミド(NIPA)ゲルを合成し、PEG(200,1000,6000,20000および50000)・水混合溶液組成に対するゲルの体積変化およびゲル内外のPEG濃度を測定した。これにより、混合溶媒中におけるゲル網目の粗密度および逆浸透圧の知見が系統的に得られた。さらに、高分子溶液モデルを用いて相関を行い、良好な相関結果が得られた。平成6年度は、シリカコロイド水溶液中のNIPAゲルの体積とゲル内外のシリカ濃度を測定することにより、溶質の排除限界を測定した。また、既存の網目孔径の推算法より得られた推定値と実験値を比較し、推定法の妥当性を検討した。さらに、各種PEG水溶液中のゲル網目孔径を推定し、孔径に対するPEG排除率を計算した。その結果、PEGサイズが大きくなると排除率は増加し、孔径が小さくなると全てのPEGに対して排除率は増加した。孔径と同一サイズのPEG分子の約20%がゲル内に侵入した。また、孔径3.3nm以下では、PEG6000以上の分子は完全にゲル外に排除された。平成7年度は、酵素(グルコアミラーゼ)をゲル内に固定し、反応物質(デンプン)をゲル外水溶液に入れ、ゲル体積とゲル外水溶液のグルコース濃度を測定した。その際、温度を変えることによってゲル網目孔径を変化させ、反応率の増減を測定した。その結果、温度が高くなるにつれてグルコース濃度は減少した。これは温度が高くなると固定化ゲルの網目孔径が小さくなり、デンプンのゲル内侵入量が減少し、反応量が減少したものと考えられる。
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