本研究は酸性雨やオゾン層の破壊など、また反応吸収を利用したプロセスには気液界面過程の動力学的な解析が非常に重要であることに鑑み、基礎面からの検討を目的として、レーザー分光法のもつ高い時間・空間分解能を利用して、界面近傍の活性化学種の濃度分布を直接的に追跡し、その過渡的挙動と適応係数を定め、さらに一般的に、気液界面移動過程、反応吸収の新しい理解とその応用を計るものである。本年度は、平成5年度中に完成させたインピンジングフローの実験方法を、さらに測定精度の上昇を試みて確立した後、測定対象をSO_2へ展開し、界面への取り込み係数の測定を温度依存性を含めて詳細に測定し、現象の理解の深化と一般化を計るため、シミュレーションと実験を対比させる形で研究を進展させた。 まずインピンジングフロー法の場において化学種移動の支配方程式を求めた上で、数値的に解いて検討した。結論的に、界面近傍における濃度勾配の測定から取り込み係数を求めることが可能であることを明らかにした。対象としてのSO_2は、C-X帯の蛍光を用いると、水蒸気の存在下においてもレーザー誘起蛍光(LIF)法で時間、空間分解の定量的な計測が可能であることを明らかにした。その上で、LIF法によってSO_2の濃度空間分布の測定を行い、気相、水相における流れの条件などに対する取り込み係数の依存性を求めた。さらに温度、水相のpH依存性を検討した。温度に対しては依存性は小さく、他方、pHに対しては、大きな依存性を示した。後者は水相に取り込まれた後の酸・塩基反応が取り込みに大きく影響することを意味している。以上の検討によって、レーザー分光の手法を用いる、取り込み係数、さらに適応係数の測定方法を確立し、SO_2について、実用的に重要なデータを得、その意味付けを与えた。
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