生産現場の晶析(結晶化)装置では、過飽和溶液内で結晶核の発生と結晶粒子群の成長の現象に加えて結晶間の凝集現象や衝突による破損・磨耗といった複雑な現象も同時に生じており、これら諸現象は製品結晶粒子群の品質(純度、形態、品質など)に大きな影響を与えている。結晶核の発生と結晶粒子の成長速度の間の関係は未知で、本研究は、単一結晶粒子の成長中に生じさせた核発生が成長速度に及ぼす影響を実験的に検討したものである。本研究の主な結果は以下の通りである。 ◯結晶成長の促進効果は、食塩、カリミョウバンのそれぞれ水溶液系と、m-chloronitro-benzene(mCNB)-アセトンの有機系で生じた。 ◯核発生と同時に溶液過飽和度の低下が始まったことが観察された。 ◯発生した結晶核の数及び大きさと促進効果の間には関係が見られた。 ◯このことから、発生した直後の微結晶(一次核、または2次核)はmacro growth unit(巨大成長単位)として結晶成長の促進現象に直接関与すると考えられた。 ◯成長促進効果は、最大で通常の成長速度の3倍に及んだ。 ◯成長促進は、発生した結晶の成長共もに効果が弱まった。 ◯成長促進の結果得られた結晶の内部には母液の取り込みや欠陥の発生などが生じて品質の低下が認められた。 ◯成長促進による結晶欠陥の発生に関しては、英国のSherwood教授らの研究グループと共同で解析しており、これに関する経過は近くまとめる予定であるが、これまでの結果では微結晶の発生時に結晶表面であった箇所から多くの欠陥が発生したことが確認されている。
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