研究概要 |
1.硝酸銀水溶液による各種不飽和脂肪酸エチルエステル(PUFA-Et)の抽出平衡 エイコサペンタエン酸(EPA),ドコサヘキサエン酸(DHA)などのPUFAエチルエステルの抽出実験を行い,抽出機構を明かにすることができた.また,PUFA-Etの分配比Dに対する油相溶媒効果は非常に大きく,その傾向はグループ寄与法の一種であるUNIFAC式で推算した油相中のPUFA-Etの活量係数を用いることにより整理できた. 2.液膜によるPUFA-Etの吸み上げ輸送 EPA-Etのn-ドデカン溶液(原料相)を仕込んだ撹拌槽Fとm-キシレン(受容相)を仕込んだ撹拌槽Sの間に硝酸銀水溶液(液膜相)を循環させる方式の2槽式循環液膜によるEPA-Etの輸送実験を行った.原料相-液膜相間のEPA-Etの分配比Dは受容相-液膜相間のDより大きいのでEPA-Etが原料相から受容相へ濃度勾配に逆らって汲み上げられた.両槽中の溶質濃度の経時変化は,本研究で提出した透過モデルにより良好に説明できた.また,原料油としてカツオ油-Etを用いたとき,原料中のDHA-EtとEPA-Etのみが選択的に汲み上げ輸送された.さらに,硝酸銀水溶液を親水性多孔質膜に含浸させて調製した含浸液膜を用い,EPA-Etをそのn-ドデカン溶液からm-キシレン溶液に汲み上げ輸送することができた.この結果は,EPA-Etの分配比に対する溶媒効果を利用して汲み上げ輸送に成功した最初の研究として注目される.また,透過速度は,各相での物質移動,油水界面での抽出平衡を考慮した膜透過モデルにより良好にシミュレートできた.なお,油相中のPUFA-Etを膜を通して硝酸銀水溶液に輸送する膜抽出操作,およびその逆の膜逆抽出操作についても速度論的検討を行った. 3.抽出カラムによるカツオ油-Et中のPUFA-Etの分離 抽出部,洗浄部を備えた抽出塔としてセンターフィード方式のバイブロミキサーを試作し,抽出温度,各部の油水流量比などの影響を検討しつつある.
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