研究概要 |
本研究では、先端技術を支える高機能性材料に必須の金属として注目されている希土類金属の分離精製に対する界面場の利用に焦点を絞り、液一液界面ならびに個一液界面を利用する新しい分離システムの開発を目的として研究を行い、以下のような研究成果が得られた。 1.液一液界面を利用した溶媒抽出法の開発 通常の溶媒抽出操作において形成される水相と有機相の界面は,有用な一つの分離場として考えることができる。そこで液一液界面を利用した新しい溶媒抽出技術を提案した。具体的には、油一水の界面に分離性能の優れた錯化剤を配置し、これを分離性能の増幅剤として使用する新たな溶媒抽出法を開発した。実際に希土類金属の中で,最も分離が困難とされているイットリウムとエルビウムの分離に応用した結果,通常の溶媒抽出における分離係数が3倍以上に向上することが明らかとなった。 2.プラズマ重合法による中空糸膜表面における分離場の構築 プラズマグラフト重合法によって、中空糸膜の表面にアクリルアミド基を導入し、この中空糸膜抽出装置を用いて希土類金属の分離実験を行った。その結果、膜表面のグラフト層が、希土類金属の分離性能を大きく増大させることが明らかとなった。この結果は、これまで単に溶液の支持体として用いられてきた中空糸膜に、新たな機能性を付与できることを意味しており、さまざまな機能性の付与が可能となった。 3.界面鋳型重合法による新しい機能性樹脂の開発 樹脂の表面に高度な分子認識(分離)場を構築するために、界面鋳型樹脂の調製法を開発した。本研究の成果として、目的金属イオンに最適化した機能性モノマーを合成できれば、本法によって高選択性吸着剤を調製できることが証明された。現在さらに、希土類金属を高度に認識する鋳型樹脂の調製を試みている。
|