研究概要 |
本年度は、液-液あるいは個-液界面に分離場を構築した新しい分離プロセスの確立を目指し、界面場を有効に利用するための分離装置の開発と界面を利用した新しい分子認識樹脂の開発を試みた.得られた研究成果は、以下のとうりである. 1.界面場を有効に利用するための新しい分離装置の開発 前年度の研究成果により、油-水の液液界面を分離場として有効に利用できる可能性が示されたが,この手法には相分離の困難さという問題が生じた.そこで、この問題を克服するために、本年度は界面場を有効に利用するための新たな2つの分離装置を開発した.その1つは.相分離操作に,電気的解乳化装置を使用する分離法である.この手法は既に乳化型液膜法において確立されており,エマルションに交流電場を印加することによって,極めて速やかに相分離が行えた。もう1つの手法は,高分子膜で油-水界面を隔てた膜抽出法を適用する分離法である.特に実用化の観点からは,単位体積当たりの界面積が大きい中空糸膜を使用することが望まれる.本研究では,テフロン性の多孔質中空糸膜を用いることによって,安定に長時間操作することができた. 2.界面場を有効に利用する分子認識樹脂の開発本研究で開発した新しい分子認識樹脂の合成法は“界面鋳型重合"である。この界面鋳型重合法(即ち錯形成可能なモノマー(油相側)と鋳型となる金属イオン(水相側)を油水界面で錯形成させたまま油相で重合を行ったのち鋳型金属イオンを除去する手法)を用いることによって、鋳型分子を「記憶」したきわめて分離機能の優れたイオン交換樹脂を合成することができた.
|