固体触媒を用いた炭化水素の改質プロセスでは、触媒上へのコ-クの析出が問題となることが多い。また、溶媒を用いた場合では、低い物質移動速度がプロセスの処理速度を低下させることがある。コールタールピッチからの水素化脱窒素反応プロセスでは、コ-ク析出による触媒の失活と、溶融ピッチ中での水素ガスの低い拡散速度に起因する低反応速度が問題であった。著者らは、この系を一例として取り上げ、超臨界流体を反応溶媒として用いることにより、これらの問題を解決することを試みた。また、超臨界流体中での固体触媒反応の特性を明らかにすることを試みた。まず、超臨界トルエン/テトラリンを溶媒とすると、コ-クの析出を抑制しつつ、高い反応速度が得られることを見いだした。また、脱窒素反応を超臨界相中(トルエン/テトラリン)と液相中(1-メチルナフタレン/テトラリン)とで行い、結果を比較したところ、触媒粒内物質移動抵抗を無視できる条件においても、超臨界相中での反応速度の方が高いことを見いだした。さらに、超臨界相中と液相中とでの反応性の差異の原因を検討するために、反応にともなうピッチ中の各窒素化合物の挙動を追跡した。その結果、ベンゾキノリンのような塩基性窒素化合物は、短時間で消失するのに対し、カルバゾールなどの中性窒素化合物は、極めて反応性が低いことがわかり、また、この反応性が液相中と超臨界相中とで大きく異なることがわかった。そこで、カルバゾールをモデル中性窒素化合物として用い、その脱窒素反応を行い、高い脱窒素率が得られる条件を検討した。まず、反応生成物をGC-MSにより同定し、超臨界相中でのカルバゾールの脱窒素の主反応経路を明らかにした。次に、各生成物間の反応速度に及ぼす温度・圧力の影響を検討した。その結果、圧力を15MPaから、5MPaへと、低圧にすると、脱窒素反応速度が倍程度速くなることがわかった。
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