モリブデンおよびタングステンのポリオキソメタレートアニオンでハイドロタルサイトをアニオン交換することによりインターカレートした触媒材料を合成した。モリブデン、タングステンのイソポリ酸アニオンをMg-Al系ハイドロタルサイトにインターカレートしたところ、層間距離が1.0〜1.2nmの層状化合物が得られた。過酸化水素を用いてリン酸トリブチル中でアルケンのエポキシ化反応を行ったところ、ヘキサンに比べてシクロヘキセンの酸化が遅いという形状選択性が観察された。つぎに、ケイタングステン酸SiW_<12>O_<40>^<4->をインターカレートした触媒を合成したところ、層間距離が1.5nmに広がりこれにともなってシクロヘキセン、シクロオクテンのエポキシ化は問題なく起こるが、シクロドデセンのエポキシ化が著しく抑制されるという形状選択性が観察された。このように層間に挿入するアニオンのサイズを調節する事により層間距離を変化させ、それによって形状選択性をコントロールすることができた。 Zn-Al系のハイドロタルサイトへのケイタングステン酸の挿入は起こりにくいが、この原因は層の電荷密度が大きいために層と層間の電荷のバランスがとれないことであると考え、Zn/Al比を大きくしたところ、電荷密度の減少にともなってイオン交換が起こりやすくなった。これにともない、シクロヘキセンの酸化のターンオーバーが増大した。これは層間距離の狭い部分のある触媒では一部のタングステン種のみが有効に作用しないが、インターカレーションがすすみ、層間が一様に広げられるとすべてのタングステン種が有効に働くためであると考えられる。
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