平成5年度は、多孔質バイコールガラス(PVG)に担持したバスカ型ロジウム錯体(RhCl(CO)(PMe_3)_2)の光化学的構造変化とそれに伴う光触媒挙動を研究した。本年度は、バスカ型錯体以外の有機ロジウム錯体、CpRh(CO)_2(Cp=シクロペンタジエニル基)、をPVGに担持した触媒について錯体構造の光化学的挙動と光触媒活性の発現機構について研究した。CpRh(CO)_2は均一系において光照射によるC-H結合の活性化に有効であると報告されているが、光触媒作用を示したという報告例はない。 担持直後のCpRh(CO)_2錯体の構造をUV-visおよびIR分光法により検討した結果、PVGでは溶液中での構造を保持していることが明らかとなった。担持錯体に脱気下で中圧水銀灯により光照射を行うとCO配位子の光脱離によりロジウム錯体の2量化反応が速やかに進行し、2量体Cp_2Rh_2(CO)_3と[CpRh(μ-CO)]_2が生成した。 さらに長時間光照射すると2量体は、UVスペクトルで230nmに吸収をもつロジウム種へと変化した。このロジウム種はPVG表面のO-H基と反応した結果生成したものであり、配位不飽和なロジウム種にO-H基が酸化的付加したCpRh(H)-O-Si(PVG)のような単量体構造をもつと推定した。また、照射する光の波長を制御することにより、担持ロジウム錯体の構造を制御できることを示した。 プロピレンの水素化反応をテスト反応とし、ロジウム錯体の構造と光触媒活性との関係を検討した結果、光触媒活性種は2量体ではなく、最終的に生成するCpRh(H)-O-Si(PVG)であることが判明した。このロジウム種上で進行するプロピレンの光水素化反応について、反応速度に対するプロピレン圧および水素圧の依存性に基づき、反応機構を提案した。
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