アルミニウム細線(直径0.2mm、長さ1m)を蓚酸溶液中50Vで10分間陽極酸化すると、細線上に約2μmの厚さで多孔性のアルミナ層(平均細孔径35nm)が形成される。本研究では、このアルミナ層中へニッケル(Ni)イオンを含んだシリカゾル溶液を導入し、乾燥・焼成の後、水素還元してNi金属微粒子を分散(Ni粒子径2〜4nm)させたワイヤー触媒を調製し、その加熱特性および触媒性能の検討を行った。 1:通電触媒としての加熱性能の評価 窒素気流中でワイヤー触媒の両端に2Vの直流電圧を印加したところ、ワイヤー触媒表面の温度は、僅か1分で熱平衡に到達し(473K)、電圧を切ることにより速やかに降温し室温に戻ることが分かった。また、ワイヤー触媒表面の到達温度は、ワイヤー内部のアルミニウムの融点(933K)を越えることはできないが、印加電圧の大きさを変えることにより、室温から約674Kまでの間で任意に設定することができることが判明した。従って、本研究で作製したワイヤー触媒は、優れた自己発熱特性を持つことが示された。 2:通電触媒としての触媒性能の評価 1-ブテンと水素の混合ガスを閉鎖循環系反応装置内に設置したワイヤー触媒上に導入し、ブテンの水素化反応に対する触媒特性の検討を行った結果、シリカ担持ニッケル触媒を分散したワイヤーでは触媒反応が進行するのに対し、シリカのみを分散したワイヤーでは反応はほとんど進行しないことが分かった。また、反応の活性化エネルギーは、2.3kcal/molとなり、通常のシリカ担持ニッケル触媒上でのそれとほぼ同じであり、ワイヤー表面のニッケルが触媒作用を示すこと、ワイヤー上の電場は触媒特性にあまり影響しない事が明らかとなった。
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