通常の触媒反応では触媒を充填した反応器を外部から加熱して運転する。本研究では陽極酸化で表面層を多孔質アルミナとしたアルミニウムワイヤーを調整し、その細孔内に触媒成分を分散して使用するので、ワイヤーの両端に小電圧を負荷するだけで加熱できる通電型触媒の開発について検討した。研究成果の主なものは以下に示すとうりである。 (1)アルミニウムワイヤー表面の多孔質アルミナ層の制御;陽極酸化時の印加電圧や陽極酸化時間により、細孔の大きさや深さが制御できた。 (2)細孔内への金属微粒子の分散方法の検討;当該研究者がこれまで検討してきた金属アルコキシド溶液を用い、含浸法によりニッケル金属微粒子を細孔内に分散できた。分散した金属の量はアルミナの2%である。 (3)通電型触媒としての加熱性能の評価;ワイヤーの両端に負荷する電圧を変えることにより、500℃以下の温度にまで自由に加熱できた。また必要な温度に到達するのに要する時間は1分以内であり、昇温特性にも優れた性能を有していることが判明した。但しAlの融点以下が限界。 (4)通電触媒としての触媒性能の評価;閉鎖循環型反応装置にニッケルを分散したワイヤー触媒を設置し、140〜300℃の範囲で1-ブテンの水素化反応を行った。反応に要する活性化エネルギーは通常の担特ニッケル触媒と同じであり、ワイヤー触媒としての性能が評価できた。 本触媒の特徴の一ツは昇温速度が早いことにある。この点を利用して自動車コールドスタート排ガスに応用するべく、ワイヤーに分散する触媒種の検討も併せて行った。その中特に酸化セリウムの役割りについては詳しく検討した。また、もう一ツの特徴は反応ガスと触媒の温度を独立して設定できることであり、水素化や脱水素反応への適用についての準備も併せて検討した。特にエチルベンゼンの脱水素反応については、反応器や触媒の現状と問題点について検討を行った。
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