平成5年度までの研究によって、磁気微粒子生成能欠損変異株のNM5株の変異遺伝子上のオープンリーディングフレーム(ORF)magAは、疎水性度の非常に高いタンパク質をコードしていることがコンピューター解析によって明らかとなった。また、プロモータープローブベクターを用いた実験から、このmagA遺伝子のプロモーターが、非常に高い転写活性を示すことが示され、magA遺伝子が実際に転写翻訳されている遺伝子であることが示された。さらに、ノーザンハイブリダイゼーションによって転写されるmRNAを検出したところ、magA遺伝子のORF長と一致する1kbのRNAが検出された。magAがコードした疎水性タンパク質は膜上で発現している可能性が非常に高く、磁気微粒子表面を覆う脂質膜上で発現していると考えている。 磁性細菌粒子表面上のタンパク質の解析については、磁性細菌AMB-1の粒子表面上のタンパク質の分離及びアミノ酸シークエンスを行った。また新たに分離された磁性細菌が生成する粒子は従来の球状粒子と異なる空豆状の粒子を生成しており、このような磁性細菌の分離は世界で初めてである。この粒子は表面が有機薄膜に覆われていること、粒子表面上からいくつかタンパク質が存在することが明らかとなった。この菌に対してもAMB-1と同様の操作を行う。この磁性細菌と他の菌の粒子表面上タンパク質を比較することで、粒子の結晶形状を制御するタンパク質について解析することが可能となり、本研究の目的である磁性細菌粒子の結晶制御への足がかりとなると考えている。
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