本研究は、磁性細胞粒子生成能欠損変異株の磁性細菌粒子の生成に関与する遺伝子を解析し、遺伝子組み換えによって新規機能性磁性細菌粒子を生成することを目的とした。変異株NM5から発見された磁性細菌粒子生成遺伝子magAをコードしたタンパク質(MagAタンパク質)について既知のデータベースとのアミノ酸配列のホモロジー検索を行ったところ、MagAタンパク質は大腸菌の膨圧調整の機能を持つカリウム流出膜タンパク質KefCと高いホモロジーがあることが明らかになった。MagAタンパク質は分子量46.8kDaであり、疎水性度の非常に高いアミノ酸によって構成され、α-ヘリックス構造が何カ所かで確認された。このことから、MagAタンパク質は膜結合性タンパク質であることが推察された。これらの結果から、MagAは内膜結合性のタンパク質であり、何らかのイオンを流出、透過するタンパク質であると考察された。また、発光酵素であるホタルルシフェラーゼ遺伝子lucをレポーター遺伝子として用い、MagAタンパク質の細胞内局在性について調べ、ルシフェラーゼをモデルタンパク質とした磁性細菌粒子表面でのタンパク質の発現を同時に検討した。MagAC末端領域に存在する制限酵素SphI部位で、magAとlucの融合遺伝子を形成させたプラスミドpKMLを構築し、接合伝達法により磁性細菌に導入した。磁性細菌粒子表面のルシフェラーゼタンパク質を検出するために、抗ルシフェラーゼ血清、プロテインA修飾金コロイドで染色し、電子顕微鏡により観察したところ、pKMLの接合伝達体の磁性細菌粒子表面にルシフェラーゼタンパク質が結合していることが確認され、MagA-ルシフェラーゼ融合タンパク質が磁性細菌粒子膜上で発現していた。このことにより、タンパク質を磁性細菌粒子表面上に発現する技術である「磁性細菌粒子ディスプレイ」という新たな手法が確立された。
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