研究概要 |
平成5年度の研究実施計画に従って得られた成果は次の通りである。 1 水素電極反応 水素発生(2H^++2e^-→H_2)および水素イオン化(H_2→2H^++2e)反応の速度論的パラメーターを白金単結晶極Pt(111),Pt(100),Pt(110)を用いて測定し、同一の律速段階(H(a)+H(a)→H_2,H(a)は吸着水素原子)でありながらその正逆において、ミクロな反応経路が異なることを始めて見出した。また水素発生反応における真の反応中間体は通常の吸着水素(Upd-H)ではなく、表面白金原子の真上に反応時に生成するOn-top Hであることが確かめられた。反応の表面構造依存性はほとんど認められなかった(Bull.Chem.Soc.JPNに発表済)。 2 窒素酸化物の反応 溶液中でNOがNO_2^-とN_2O,N_2に不均化することが明きらかとなり、一連の窒素酸化物の間に関連性のあることが判明した。したがって代表的なNO_2^-およびN_2Oの反応を調べたところ、これらは極めて面構造に依存し反応機構の解明にあたって有用な知見が得られている。 3 電極系「一点接触型オンライン質量分析計」の作成に成功した(J.Electroanal.Chem.印刷中)。本装置は、全く新しい発想によって作成され、微小な単結晶極にも適用可能であり、電流測定と同時に極めて微少な生成物をリアルタイムで追跡出来るため、今後この分野において有力な手法となるものと考えられる。また、電極系in-situ FTIRは現在構築中である。 4 酸素還元反応(Chem.Lett,発表済),CH_3OH酸化反応(電化,発表済,J.Electoroanal,Chem,印刷中)についても1)HSO4^-イオン吸着の面構造依存性、2)Upd-Hの役割、3)溶媒分子であるH_2Oの吸着および4)反応自身の面構造依存性について多くの新しい知見が得られつつある。また、反応制御因子の一つである5)反応分子の分子構造と反応場である表面金属原子の配列との関係についても有用な知見が求められつつある。
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