放射線・光複合照射による新規高効率化学反応に関する研究

1993 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05453121
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 高椋 節夫 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (50029849)
• 研究分担者: 佐治 幸子 大阪大学, 産業科学研究所, 教務職員 (50197844) ; 石田 昭人 大阪大学, 産業科学研究所, 助手 (20184525) ; 岡本 能樹 大阪大学, 産業科学研究所, 助手 (40029864)
• キーワード: 放射線化学 / 光化学 / レーザーホトリシス / パルスラジオリシス / 反応中間体 / 過渡現象

研究概要

放射線・光複合照射による新規活性種に関する研究を、当初の研究計画に沿って以下のように実施した。
(1)複合照射システムによる過渡現象の観測 本研究で購入したパルスYAGレーザを光源とするレーザ光分解装置(励起波長266,355,532mmパルス幅4ns)を完成させ、これと既存の電子線パルスラジオリシス(エネルギー28MeV,パルス幅20ps〜8ns)装置と組合せ、電子・光複合照射系を完成させ、中間体の測定を開始している。
(2)2-メチルベンゾフェノン誘導体の複合照射 この系についてはすでに予備的な結果を発表しているが、高時間分解能の本装置を用いて、不安定エノール中間体の光学化反応を解析した。
(3)C=N基を有する不安定化学種 ベンザルアニリンおよびアジリン誘導体について、低温マトリックス中で光あるいはγ線照射を行い、励起-重項あるいはラジカルイオンを経由するシス-トランス異性化および環開裂反応の機構を考察した。とくにアジリンでは光環開裂により生成したニトリルイリドの-電子酸化・環元による新規活性種の生成を確認した。
(4)複合照射系に適した反応系の探索 電子線あるいはレーザー光照射により生成する中間体の生成量、寿命、光吸収バンドおよびその化学反応様式等の基本データをもとに複合照射系を選定する必要がある。本年度は、芳香族オレフィン、芳香族リン酸エステル等について、ラジカルイオン、エキシマー、エキサイプレックス等を対象に検討を行った。

研究成果

• [文献書誌] Toshiyuki Tamai,Akito Ishida,Setsuo Takamuku,et al.: "Properties of Radical Cations Generated by the Pulse Radiolysis of 1,^<(1)>-Bis(diarylethenyl)alkenes.Trapping of Distonic 1,4-Radical Cation by Molecular Dioxygen" Chemi.Lett.149-152 (1994)
• [文献書誌] Akito Ishida,Setsuo Takamuku,et al.: "Photoinduced Alkoxylation of 2-Vinylpyridinium Ion" Bull.Chem.Soc.Jpn.66. 1580-1582 (1993)
• [文献書誌] Kenichi Nakabayashi,Setsuo Takamuku et al.: "Cycloreversion of Aryl-Substituted Cyclobutene by Direct Photolysis." Bull.Chem.Soc.Jpn.66. 698-702 (1993)
• [文献書誌] Masanobu Kojima,Akito Ishida,Setsuo Takamuku: "Mechanism of Photochemical Reaction of Contact Charge Transfer Pair between 1,1-Diarylethene and Oxygen." Chem.Lett.979-982 (1993)
• [文献書誌] Akito Ishida,Setsuo Takamuku: "Hydroxymethylation via radical intermediates Chemistry of Fuctional Groups,Ed.by Saul Patai" John Wiley & Sons Ltd.,London, 657-686 (1993)
• [文献書誌] 高椋節夫: "実験化学講座11 日本化学会編" 丸善, 364-374 (1993)